アニメ「エスカ&ロジーのアトリエ」の第8話の演出(部内向け)

おそらくこの日記を観ているみなさんの中には YouTube やニコニコ動画などの動画サイトを一度は利用したことがある方がいるのではないでしょうか。このキャンパスとりわけ C3 のメンバーも自宅でおのおの好きな動画を観て楽しんでおります。
近年、日本のアニメーションを海外に売り出していこうという試みもちらほらみられます。
それは日本国内でしか放送されなかったアニメーションが、今やインターネットを使って場所や時間を選ばずに観られるからです。ハードウェアの進化、インフラの進化、ソフトウェアの進化、ウェブテクノロジーの進化、どれも今の状況を形成するのに欠かせないものです。

私が最近観たのは「エスカ&ロジーのアトリエ~黄昏の空の錬金術士~ 第8話「アツアツ? 温泉旅行です!」」でした。ニコニコ動画で最新話を無料(期間限定)で観ることができます。すごい世の中になりました。

この「エスカ&ロジーのアトリエ」は、テレビゲーム(コンソールゲーム)が原作のアニメーションです。
ちなみに C3 のメンバーの 7 割の部員がこのアトリエシリーズのファンです。残りの 4 割はディスガイアシリーズのファンで、残りの 3 割はネプテューヌのファン、それ以外はイースシリーズのファンが大半を占めています。

日本のアニメーションは世界的に観ても特殊なのではないか、と思います。毎週のように 24 分の尺のアニメーションが放送されています。放送局や地域にもよりますが、番組数は毎日 3 ~ 10 本の番組が放送されています。アニメーションを作って放送することは到底 1 人ではできません。オープニング・エンディングに流れるスタッフロールを観ただけでも数十人、数百人の人や組織が関わっています。おそらくスタッフロールに載っていない直接関係していないスタッフもいることでしょう。(例えば制作会社の法務担当とか含めても。)

このことから、アニメーションを作るのに考えなければいけないことが見えてきます。例えば、「期間内に作ること」です。制作スピードを落とさないこと、あるいは速度を上げることが重要視されます。一回放送するのにかかるお金、影響、スポンサーの意向もろもろを考慮して、放送を落とさない必要があります。
次に大事なのは「お金をかけすぎないこと」でしょう。アニメーションを作るのにいろんな人が関わります。人を雇ってお給料を払う場面を想像してみてください。一人雇うのにかかるお金とアニメーションの制作に関わる人の数をかけてみただけでも、12話分制作するととても大きなお金が動くことが容易に想像できます。

アニメーションを作っている世界では「速く、安く」作ることが求められているはずです。制作会社ではおそらく今も昔もいろんな試行錯誤をして「期間内に、早く正確に質のいいものを作ろう」と取り組んでいることと思います。CG の普及はここに大きく作用しています。C3 の部室には CG WORLD が常備されており(部員のみなさんはもちろん愛読していることと思いますが)、読むたびにアニメーションにおける CG の導入例が毎号特集されているほどです。

「速く、コストをかけず、それでいて面白いものを」作っていくために、CG を使ったアプローチの他に次のアプローチも挙げておきましょう。
それは「出崎統アプローチ」です。部員の多くが、東映アニメーションが制作した長編アニメーション “AIR 劇場版“ のファンです。私もファンで、この劇場版 AIR を何度も観て、笑いと涙が止まらないほど感動しました。その感動は例えるなら、観終わった後に思わず真っ白な灰になるほど…でした。このアニメーションを監督したのが出崎統氏です。

出崎氏はアニメーションを速く、コストをなるべくかけず、それでいて「観る人を楽しませる」画期的なアニメーション手法を開発しました。その有名なものに「止め絵(ハーモニー)」や「繰り返しショット」があります。実は、先に挙げたエスカ&ロジーのアトリエ第8話でもこの出崎氏を彷彿とさせる演出がこれでもか、と言うほどに取り入れられていました。ハーモニー・繰り返しショットもそうですし、”AIR 劇場版” でもおなじみの「画面分割」も多用されていました。第8話で絵コンテ・演出を担当したのは中野英明氏という方で、出崎手法をふんだんに取り入れることで有名だそうです。おそれいりました。

演出という面で観ていくとまた変わった面白さが見えてきます。そして今回取り上げた出崎氏のアプローチは、日本のアニメーション業界ならでは、あるいはこういった環境でなければ生まれなかったアプローチだと思います。
エスカ&ロジーのアトリエ第8話には他にもいろんな演出が素人目に観てもわかりやすいくらい凝縮されていました。アニメーション制作会社のシャフトの映像作品によく観られる「シャフ度」と呼ばれる構図や、同じくシャフトが担当する作品でよく用いられる下から回り込むカメラも確認できました。
他にも、映画監督のヒッチコックがあみだした「めまいショット」俗にいう「ドリーズーム」も気球のシーンや水晶のカットで見かけることができました。ドリーズームは背景とキャラクターのレイヤーがわかれているセルアニメーションと相性がいいため特にアニメーション作品では多用される傾向にあります。

部内には、ゲームアプリケーションを作成している部員も少なくありません。今回はアニメーションの演出について話しましたが、コンソールゲームを遊ぶときなんかもゲームエフェクトをもう一度確認してみてください。きっと面白い発見ができます。そして面白い発見が出来たら、作成中のゲームに演出やエフェクトを加えてみてください。演出の凝ったゲームを遊べるのを楽しみに、そして Blu-ray では白い湯気と謎の入射光がエンドユーザの望む方向に修正されていることを祈っています。